俳句例:201句目～
ベランダを夕餉の場とし一家健/左右木韋城
受験子の夕餉のキャベツ大盛りに/館岡沙緻
受賞作家夕餉の秋刀焼いてをり/鈴木真砂女
風呂吹にあたゝまりたる夕餉かな/岩木躑躅
一人居の夕餉とセット晦日そば/岡村喜代子
南部ことばいきいき杜氏らの夕餉/荒井正隆
十薬のまだ見えてゐる夕餉かな/本庄登志彦
ふらこゝに夕餉つぐる婢や再び/阿部みどり女
だまり食ふひとりの夕餉牡蠣をあまさず/楸邨
けら鳴いてひとりの夕餉音もなし/鷲谷七菜子
くわりん落つことを夕餉の話題とす/高澤良一
夕餉までの眠りの中の遠ひぐらし/和田耕三郎
枇杷腹と言ひつも夕餉にぎはへる/古村美恵子
夕餉の座おしだまり山焼けてゐる/金尾梅の門
月島や夏犇犇と阿鼻叫喚の夕餉どき/橋本夢道
春雨や夕餉せかるる汁葉摘み/飛鳥田れい無公
トマトなどもぎ来て夕餉もてなされ/福井圭児
スコールに濡れたるままの夕餉かな/金子兜太
接木して落ちつかぬ日の夕餉なり/藤原たかを
わが病めば子らいさかはぬ夕餉寒し/吉野義子
俳句例:221句目～
紫蘇揉んでひとりの夕餉涼しけれ/石田あき子
時雨るるやすぐ洗い終う夕餉のもの/古沢太穂
螻蛄鳴くやひとりの夕餉戸を閉てず/金久美智子
若菜あおしひとりの夕餉灯をともさず/藤木清子
縁談や夕餉つねなる冷奴/本島高弓「吾で吾夢」
夕餉目剌をみんなで分けて祈らず喰う/細谷源二
風鈴狂へり夕餉おくるゝ由ありて/竹下しづの女
ことしは蚊が遅い寺の夕餉でもして去ね/喜谷六花
火をせざりし夕餉わびしうさみだるゝ/金尾梅の門
霜やけや母に夕餉の後影/『定本石橋秀野句文集』
CDからこぼれ落ちた夕餉の笛吹童子/松岡月虹舎
食糧難つづく夕餉鶴のごとくにのみ下す/橋本夢道
夕餉炊くでもなしの粥あつくうからあきぬ/喜谷六花
まずしき夕餉したたむる灯のすずしさよ/野村朱鱗洞
青葉木菟夕餉を終へし手を拭けば/水原秋櫻子「古鏡」
夏の夕餉はうれしき馬鈴薯の煮ころがし/飛鳥田れい無公
板じきに夕餉の両膝をそろへる/尾崎放哉、荻原井泉水輯
寒念仏灯なき夕餉の露地となる/『定本石橋秀野句文集』
「最後の晩餐」覆はれしとき現なるわれらが夕餉失せにたらずや/高橋睦郎
