季語/林檎(りんご)を使った俳句

俳句例:101句目~

林檎園脚立を夕陽あたたむる/高澤良一

林檎売雪来れば穿く雪沓か/水原秋櫻子

林檎熟る使命感もて番犬吠え/藤岡筑邨

林檎甘し酸し光陰はただ迅し/成田千空

林檎紅し千曲忘れ江紺を張り/西本一都

林檎紅し恋女房よ死する勿れ/西本一都

アルプスの太陽白し林檎園/粟津松彩子

林檎累々メルヘンのはじまれる/松澤昭

林檎置く車窓雪野は果もなく/永井龍男

林檎齧りゐて浸蝕の島を見る/立川京子

枝垂林檎幾霊ねむる家ならん/成田千空

母が割るかすかながらも林檎の音/龍太

津軽路の民話ゆたかに林檎村/河野南畦

浅間見え入口もなき林檎園/粟津松彩子

ボーナス待つ深く林檎の創抉り/有働亨

淡路女忌帯に林檎をだく別離/石原八束

湖風が崖にぶつかり林檎熟れ/木村蕪城

一人入り林檎ばたけの雪に跡/京極杞陽

牧の娘は馬に横乗り林檎かむ/小野白雨

独房に林檎と寝たる誕生日/秋元不死男

俳句例:121句目~

七月や林檎をシャワーもて洗ふ/皆吉司

球体の海なり林檎ころげゆく/対馬康子

病む母へ林檎八方より届く/猿橋統流子

病妻の前しくしくと林檎剥く/辻田克巳

皮のまま林檎食い欠く沖に船/西東三鬼

秋深き旅となりつゝ林檎食ふ/高濱年尾

積み上げて林檎うれしや枕下/会津八一

五大陸模様の林檎ならば買ふ/櫂未知子

人恋へば林檎の歯形さへ著く/川口重美

立子とゐ晴子が林檎もぎくれし/森田峠

今宵煮るべし国光といふ林檎/高澤良一

箇の蟻として独立す林檎の上/加藤楸邨

停電のあとの明るさ林檎むく/神田敏子

傷林檎厩舎に届くクリスマス/斎藤節子

刃を入るる隙なく林檎紅潮す/野澤節子

粒大き出羽の林檎と剥き翳し/石塚友二

縞に侍し刻々赤し夜の林檎/赤城さかえ

蛍めく奥羽りんごの明りかな/室生犀星

赤くなる為の林檎の日を纏ふ/佐藤静良

部屋埃林檎は皿に寝て醒めて/和知喜八

俳句例:141句目~

口紅の無きがの口に林檎噛む/石塚友二

同齢の林檎のそばに眼鏡置く/和知喜八

君が胸林檎を磨くためにあり/石田勝彦

長城の見えて林檎の実る村/伊藤いと子

啄木忌林檎芯まで食ひをはる/宮武寒々

降りいでし雨に林檎の紅くもる/上村占

隣り合ふ犬猫の宮林檎熟る/八牧美喜子

雪の昼林檎の冷えを身に加ふ/野澤節子

雪声は人声りんごに臍ありぬ/寺田京子

夏川のみどりはしりて林檎園/飯田龍太

雲白く国かがやきて林檎狩る/対馬康子

夜の林檎ときに胸うつ妻の言/中島斌雄

風荒き雪と林檎を噛みしむる/臼田亞浪

颱風の林檎傷つきあふて落つ/西本一都

大き手の働いてゐる林檎の実/石田郷子

天澄めば林檎耀き垂れにける/岸風三楼

太陽にいちばん近き林檎もぐ/岩崎照子

太陽は殼を脱ぎ捨つ林檎園/小檜山繁子

家中が林檎で匂ふ籾こぼし/瀧澤伊代次

寺影を出て山影の林檎みち/鳥居おさむ

俳句例:161句目~

小粒なるイヴの林檎を丸齧り/太田土男

山に夏雲かくれてゐるや林檎村/中拓夫

左手と右手むつまじ林檎むく/國弘賢治

幕切れの昼寝の中へ林檎投ぐ/和田悟朗

年送る合唱林檎を片手にもち/古沢太穂

強東風や林檎の太枝梁のごと/西本一都

悲運にも似たり林檎を枕とし/安東次男

手で磨く林檎や神も妻も留守/原子公平

林檎描く絵具惨憺盛り上り/野見山朱鳥

掛け終へて袋明りの林檎園/小田桐静風

林檎真つ赤唖者の頷き幾たびも/成田千空

林檎より雲たたなはり日が囃す/古舘曹人

乳房圧して林檎あふるゝもぎ袋/中島斌男

つけた傷つけられた傷林檎噛む/辻美奈子

支木はそのまゝ林檎もぎ盡し/吉良比呂武

てのひらに載りし林檎の値を言はる/草城

柿は眼ひらき林檎は暗く安曇村/桜井博道

春宵の林檎のはだへゆるみゐる/藤木清子

林檎の香こぼす馬橇の疲れをり/堀口星眠

死顔や林檎硬くてうまくて泣く/西東三鬼

俳句例:181句目~

夜夜の灯に夜夜の林檎と教案簿/木村蕪城

林檎もぐ旅の土産に葉をつけて/田中照子

林檎へ手触れさせもらふ菩薩晴/村越化石

林檎もぎ食べ放題と言はれても/竹内光江

泣顔の思ひ出すごとく林檎噛む/加藤楸邨

枯れ枯れて一葉とゞめず林檎園/相馬遷子

鋏の音間遠に林檎の枝おろす/川島彷徨子

林檎落つアダムの空の深さより/加藤耕子

星空へ店より林檎あふれをり/橋本多佳子

汽罐車の吐く火かぶりぬ林檎園/宮武寒々

わくらばの梢あやまつ林檎かな/蕪村遺稿

われに子に林檎運びの妻なりし/杉山岳陽

われよりも低きに林檎高きにも/石田勝彦

比ぶれば林檎は若く柿は老ゆ/相生垣瓜人

アルプスの夕日に赤し林檎園/粟津松彩子

林檎もぐ脚下鳶ゆく日を載せて/木村蕪城

林檎甘し八十婆まで生きること/寺田京子

林檎樹下病める林檎の集められ/山口誓子

林檎の芯屑籠に捨て慣れぬ事務/沢木欣一

流れ寄る林檎あまたの無頼の夜/成田千空