季語/橇(そり)を使った俳句

俳句例:101句目~

初荷橇まつ毛の長き馬に逢ふ/本宮哲郎

初荷橇氷湖をたわみつつ渡る/吉村唯行

炭小屋は粗末なるもの炭橇も/徳永玄子

炭橇に犬が吠えをり人が曳き/加藤楸邨

押す力加はつて橇ひかれ出す/佐藤一村

町川に橇を洗へる雪解かな/大橋櫻坡子

橇納ひ遠い音のせ芽吹く空/新谷ひろし

眦を飛ぶ綺羅星や橇を駆る/成瀬正とし

橇を曳く子の丹の頬よ夕映よ/中島斌男

橇の子に日射せば珠の声放つ/板持玲子

空に抛らるる子もあり橇の丘/依田明倫

寒肥の野をすぐ橇やよそ~し/萩原麦草

空鞭のひびき夜空に橇を駆る/水見寿男

立てかけし橇に四温の雫かな/原田青児

橇行に寝し村酒場のみ灯り/石井とし夫

採氷の橇がわり込む湖上の路/古館曹人

客降りし橇に残れる湯婆かな/棚元花明

御座橇や先に立たる道具持/羽州-不玉

綺羅星に鈴を鳴らして橇の馬/山田無月

橇用意して娼家ある深雪かな/森川暁水

俳句例:121句目~

耳を打つちら~雪や夜の橇/楠目橙黄子

旅二日すでにさみしき橇の鈴/栗生純夫

日は低く氷上にあり橇ゆきき/田村了咲

草橇の子等の声飛ぶ夕薄暑/佐藤ちさと

橇の子の膝にゆれをり遊蝶花/堀口星眠

藪の家真赤な橇を蔵ひけり/吉本伊智朗

触れて響く馬橇の鈴や掃納/鳥羽とほる

走り出すまでは甘えて橇の犬/藤南桂子

軒吊の昆布に触れて馬橇過ぐ/大網信行

巨き雪遺骸を橇に載せゆけり/沢木欣一

橇のあと水ついて鴉むきむき/佐野良太

急ぐでもなき橇の綱長く曳き/高濱年尾

奥湯への郵袋橇にかへて発つ/中村翠湖

道知りて橇曳きゆくや秋田犬/細谷鳩舎

箱橇の滑りとまれば曳き登り/福田蓼汀

橇曳きて辻につどへる注連貰/増澤正冬

吹雪衝く橇に面を伏せもして/高濱年尾

橇遊び開拓の碑の吹きさらし/太田土男

防寒衣馬橇の馬をおびやかす/石川桂郎

除夜淋し町ゆく橇もなき今は/阿部慧月

俳句例:141句目~

曳く人の足見ながらに橇の我/高濱年尾

弓手あげ星流れしと橇の馭者/成瀬正俊

雪踏に従いて柩の橇曳けり/大橋櫻坡子

雪道をひたすらなもの橇の馬/細見綾子

北海の荒るるに沿ひつ橇の鈴/河野南畦

音曳いて馬橇とまるや星の中/堀口星眠

汽車のつく頃幌橇が一つ来し/高野素十

泣初や父の曳く橇くつがへり/堀口星眠

後手に曳いて行く橇氷下釣/永谷たくじ

山鳴るとうちみる妻や橇暗し/飯田蛇笏

馬橇過ぎ又馬橇過ぐ子等遊ぶ/高木晴子

炉によつて連山あかし橇の酔/飯田蛇笏

手綱に血かよひ馬橇の動き出し/上村占

郵便旗たてゝ馬橇の来りけり/長谷草石

メリケン粉積んで奥地へ駱駝橇/田村了咲

リボンつけ雪のまつりの橇の馬/森田公司

乗り捨ての子の橇暮るる雪の道/三嶋隆英

仔馬ひく橇をみんなが振り返る/高野素十

凭れたる荷にあるくぼみ橇の酔/田村了咲

吹きすさぶ白き闇より橇の鈴/白旗喜知子

俳句例:161句目~

夜橇駆る謎のごとくに暗き森/成瀬正とし

一輪草木橇をつかひすてゝあり/木津柳芽

寒鮒売子の橇借りて引ききたる/三宅句生

箱橇で来てかまくらの小さき客/菊地映楼

小走りの馬橇をつつむ雪つむじ/平子公一

少年のたてがみそよぐ銀河の橇/寺山修司

箱橇の荷についてゆく別れかな/橋本鶏二

急峻にかかり炭橇ふと技見す/加藤知世子

提灯を借りて尚遣る橇に在り/楠目橙黄子

明らかに二つの橇の鈴となり/佐藤多太子

星空へたちあがりたる橇の馭者/成瀬正俊

暁近く馬橇の鈴のすきとほる/小清水幸子

暮れてなほ坂に聲して橇の吾子/依田明倫

肥橇曳く遠深雪野に消えむため/小林康治

月の出てあかるくなりぬ橇の道/村上鬼城

若き主婦の毛橇に幼児湖の眼で/細谷源二

林檎の香こぼす馬橇の疲れをり/堀口星眠

楮橇曳くかんじきを穿きにけり/西本一都

落照の燃ゆるばかりに橇の唄/柴田白葉女

落葉松の径ゆき馬橇の鈴透る/池田風信子

俳句例:181句目~

橇あそび家路の雪の凍りゆく/石橋辰之助

蝶憩はす橇この冬の痩せ加ふ/中戸川朝人

行き交ひし夜の馬橇より笑ひ聲/依田明倫

橇でゆく棺はながく見送らむ/永田耕一郎

橇でゆく長き別れを惜みけり/合田波一郎

橇の子に暮色三人は淋しき数/千代田葛彦

橇の子の登りつくこと繰り返し/嶋田一歩

橇の鈴きこえしのみの今宵かな/柏崎夢香

橇ゆきて寂しき岳を野にのこす/堀口星眠

橇を干す戸にまたひゞき遠雪崩/山岸治子

道ばたにしまひ遅れし馬橇かな/比良暮雪

橇一つ立てかけしまゝ戸締まりす/森田峠

橇去りてより鈴きこゆ木魂とも/石原八束

橇立てて月の出おそき湯華小屋/渡辺立男

野の果につまづく夕日馬橇去る/堀口星眠

錆び古りて馬橇の鈴の結ばるる/石川桂郎

橇著いてよろめき出でし女かな/西方石竹

橇逸る馬の眼に灯の飛び入れば/栗生純夫

橇馬の息づきばかり夜半をゆく/中島斌男

橇馳せて何忘れんとしてゐるや/田中妙子