季語/悴む(かじかむ)を使った俳句

俳句例:101句目~

悴める掌を包みやり諭しけり/西村和子

教室の悴む吾子を目で励ます/山田弘子

悴みて猿の腰かけ向ひ合ひ/殿村莵絲子

釘をさすつもりの言葉悴めり/江頭信子

悴みてひとの離合も歪なる/中村草田男

悴むを許さぬ一机ありにけり/石塚友二

悴んで言はずもがなを甲走る/小出秋光

電車待つ鬼城の町に悴みて/猪俣千代子

飴なめて流離悴むこともなし/加藤秋邨

悴めば遺影は横を向きにけり/古舘曹人

悴めり波濤は石をまろばせつ/斎藤梅子

悴みて亡き師詠ふを自戒せり/石川桂郎

かじかみて石切る山と海の間/津田清子

悴みて佛づとめの燭ともす/吉田長良子

死者生者共にかじかみ合掌す/西東三鬼

悴みて囚徒に髪を刈られけり/角川春樹

悴みて地にすれすれのよき枝を/上村占

悴みて堆朱の膳をしまひをり/下村槐太

悴みて己のことのほか知らぬ/中杉隆世

悴みて心いきいき怒れるなり/佐野美智

俳句例:121句目~

悴みて憤けば不愍笑めばなほ/川口重美

すぐ泣く子今泣きさうに悴みて/京極杞陽

つと立ちて悴む我をつきはなす/岡田和子

一指一指悴かみ十指らちもなし/岡田日郎

山大きいまぼろし拾ふほど悴かむ/松澤昭

怯へしか悴みゐしか手をとれば/野中亮介

悴む妻見れば却つて口つぐむ/榎本冬一郎

悴みて見上ぐる塔の高さかな/片山由美子

山家宿二階つき出て鼻悴かむ/平井さち子

悴みしわが手包める病者の手/白岩/うた

悴むや胸ふかき像捨てきりて/鷲谷七菜子

悴みし身ぬちつらぬく茶碗酒/小島千架子

悴みてあやふみ擁く新珠吾子/能村登四郎

悴みてすぐ知れる嘘ひとつ吐く/山田弘子

悴みてつひに衆愚のひとりなり/斎藤空華

悴むや拳固宙までおろしけり/阿波野青畝

悴んで聞いて忘れてしまふこと/稲畑汀子

悴んでまるくなりゐる女房かな/森川暁水

悴みて乗つたる石のぐらりとす/大石悦子

悴みて人の云ふこと諾かぬ気か/高濱年尾

俳句例:141句目~

悴みて喪にゆく夫や畦づたひ/石田あき子

悴みて汽車に眠りぬあすも旅/成瀬櫻桃子

蜘蛛迅し悴みをれる身ほとりを/森川暁水

悴み病めど栄光の如く子等育つ/石田波郷

悴めどまた火の粉浴び鬼が舞ふ/友岡子郷

跳ぶ水の幅悴める眼にはかる/大岳水一路

悴めばなほ悲しみの凝るごとく/永井龍男

悴みて飛ばなくなりし竹とんぼ/宮下秀昌

悴みて眼よりも高きものを見ず/百瀬美津

悴みて跼むにあらず祷るなり/成瀬櫻桃子

悴めるすがたに牛を曳き去りぬ/下村槐太

悴みて海苔漉き了へし窓白む/長谷川史郊

悴むとその身切りさう鎌の神/加藤知世子

悴みて見知らぬ街を行くごとし/井沢正江

流離の荷からげ悴むばかりなり/小林康治

麻酔利く悴めるわれ居なくなり/辻田克巳

悴む身ほどけて椅子に深くをり/高木晴子

かじかむや大き朱塗の牡丹刷毛/下田実花

聞けば聞くほどに心の悴みて/水田むつみ

耳飾りかじかむ月に鋭どくて/柴田白葉女

俳句例:161句目~

叱らるる子も悴かみてかなしけれ/橋本鶏二

氷湖行けばさすらひの日の悴めり/巌谷小波

悴みて綯ひたる縄のやはらかし/河崎/初夫

妻とのみなるはいよいよ悴むなり/右城暮石

悴かみてちひさな嘘が言へぬなり/香西照雄

悴かみて糸の縺れをとくすべも/成瀬正とし

悴めば地にすれすれに星生れぬ/加倉井秋を

悴かめる児の手に白き息をかけ/山田栄美代

鍋釜もわれにさからふ悴かめば/沢田しげ子

悴みし海豚のごとき眼をみたり/稲垣きくの

悴みて死の日待つとはあらざりき/小林康治

悴みてこころ閉してしまひけり/柴田白葉女

悴みて生きてゆく嘘つきにけり/成瀬櫻桃子

悴みてわが句おほかた旅に得し/成瀬桜桃子

悴みてをりしが犬に吠えらるる/木暮陶句郎

悴んでゐる手を垂れて這入りくる/京極杞陽

かじかみし手に蔵の扉の重かりし/宮林和子

かじかみし手を尻に敷き靴みがき/北野民夫

かじかみし顔を写してコンパクト/稲畑汀子

かじかみて何をするにも腹だたし/右城暮石

俳句例:181句目~

結び目の解けぬかなしさ悴めり/馬場移公子

かじかみつゝ月給袋逆さに持つ/石橋辰之助

乳さぐる小蟹の如くかじかむ手/赤松ケイ子

投網師の悴かむ手より鮒を買ふ/河前/隆三

悴めり雌伏せりとも言はむかな/相生垣瓜人

人の死を知る眼交はして悴かめる/石原八束

悴みてゐしそのことをもてあます/加倉井秋を

いたいけの悴けたる手を垂りにけり/松村蒼石

悴かみてペン落しつつ稿つづけ/阿部みどり女

悴みて読みつぐものにヨブ記あり/上田五千石

もの煮る火見つめかじかむ顔ひとつ/松崎丘秋

めつむれば霜雫せり悴むなよ/赤城さかえ句集

修二会いま火の粉かじかむ群衆に/諸角せつ子

幼な子のかじかみし爪藷に刺さる/田川飛旅子

暮天の冬日掴み来たれよかじかむ子/細谷源二

茶を吹いて悴むこゝろほぐれをり/河野柏樹子

震災の被害を知らす文字かじかむ/八牧美喜子

かじかみし手をよせ来る戀としも/久保田万太郎

かじかみて気ものらぬまま花ミモザ/落合よう子

かじかみて脚抱き寝るか毛もの等も/橋本多佳子