俳句例:101句目～
懐手してふところに何もなし/栗原米作
懐手するよりほかに用なき手/田中暖流
懐手すれば日向のあらはるる/清水径子
懐手すぐぬくもるや疲れたり/野澤節子
火防凧買はんと解きし懐手/町田しげき
懐手して僧歩きをり暮の町/高橋淡路女
父の忌の海見て暮るる懐手/古賀まり子
身を鎧ふすべなき老いの懐手/原田和子
踏青や風に向ひて懐手/吉武月二郎句集
捨てがたき一句思案の懐手/津吉百合子
解けば子のものなり父の懐手/鷹羽狩行
懐手してをり親父らしくをり/馬場白州
遠き眸をして懐手わすれをり/仙田洋子
遠濤のさえざえとある懐手/鷲谷七菜子
懐手水かきありと言つてみよ/平井照敏
懐手子らの言ひ分終るまで/永井たえこ
風狂のひとと見らるる懐手/加藤三七子
木曾の子等懐手して遊びゐる/松藤夏山
懐手して身の老いに抗しけり/石原八束
友はみな征けりとおもふ懐手/高柳重信
俳句例:121句目～
ふところ手祝儀の額を顎でいふ/杉本寛
医通ひの片ふところ手半夏雨/大野林火
水鳥やマントの中のふところ手/原石鼎
呼び交いて荒磯の子らの懐手/鈴木六林男
こんなこと似合はざれども懐手/高澤良一
またすこし酔へば懐手もさびし/仙田洋子
われにまだ五欲うすうす懐手/町田しげき
去年よりも自愛濃くなる懐手/能村登四郎
湯もらひにゆく父と子の懐手/千代田葛彦
懐手解けば鯛焼の香なりけり/水原秋櫻子
知りすぎしことのさみしき懐手/西川五郎
懐手して出て曲らねばならぬ/加倉井秋を
鴨見つつ男に近きふところ手/山田みづえ
子の負くる喧嘩見てをり懐手/黒坂紫陽子
わが胸の乳は遠山ふところ手/赤松ケイ子
えいのごとゆらぎそめたる懐手/藤田湘子
恋愛詩ふところ手して口ずさむ/仙田洋子
うやうやしき波の列くる懐手/大木あまり
野火の裾片ふところ手して通る/西本一都
ふところ手してみる限り家も箱/五十嵐研三
俳句例:141句目～
ふところ手入日の赤さきはまれり/川上梨星
懐手してふところになにもなし/青柳志解樹
ふところ手解くやすなはち糶り落す/金子潮
寒牡丹ふところ手して大き影/阿部みどり女
空手胼胝火種の如しふところ手/赤松ケイ子
ふところ手ユダ何食はぬ貌をせり/成瀬櫻桃子
ふところ手若き日の虚子ちらと見し/河野静雲
ふところ手して手の遊ぶたのしさに/皆吉爽雨
懐手あたまを刈つて来たばかり/久保田万太郎
ふところ手してゐるわれを何と見る/下村梅子
ふところ手して何食はぬ貌のユダ/成瀬桜桃子
ふところ手背をへらへらと振りゆけり/野村喜舟
ふところ手こころ見られしごとほどく/中村汀女
ふところ手してふところになに持つや/島村茂雄
ふところ手頭を刈つて来たばかり/久保田万太郎
ふところ手出して見たれば梅莟む/冬の土宮林菫哉
