季語/水鳥(みずとり)を使った俳句

俳句例:201句目~

水鳥の沼をへだてて瞽女の道/佐川広治

水鳥の泥をせせりて汚れなし/岩田由美

水鳥の流るゝ四つ木橋の下/今井杏太郎

浮寝鳥連れがぽつりと呟けり/椎名書子

水鳥の羽ばたきに急く婚の朝/満田玲子

水鳥の羽打ちの遠く水ぬるむ/高澤良一

水鳥の聲のかたまり暮天冴ゆ/高田蝶衣

水鳥の背の高う成るしぐれかな/千代尼

水鳥の胸の寄り合ひつつ流れ/石田郷子

水鳥の近づけば寄る若さあり/金田咲子

水鳥の静けく渡れゆきにけり/角田竹冷

水鳥の飛び交ふ錨まきにけり/清原枴童

水鳥は素顔の我のひかりなり/渡部陽子

水鳥も見えぬ江わたる寒さ哉/蕪村遺稿

水鳥やあたたかさうな海の色/清水基吉

水鳥やあるかなきかに舟の者/小平雪人

水鳥やひとつ鋭き女流の句/百合山羽公

水鳥やをんな逃るる家を持たず/樋笠文

水鳥やマントの中のふところ手/原石鼎

水鳥や一羽立ちたるあとの闇/武田鶯塘

俳句例:221句目~

水鳥の余せる水の広さかな/蓬田紀枝子

水鳥や夜は閨近く浮きつれて/野村泊月

水鳥や夢より怖きものに風/夏井いつき

水鳥や椅子にある人みな睡り/依光陽子

水鳥や江をうつ芦の下はしる/加舎白雄

水鳥や百眠り二三潜り浮く/東洋城千句

江の空の水より淡し浮寐鳥/石島雉子郎

いちめんの重油のかなた浮寝鳥/森田峠

かすかにも芝掃く音や浮寐鳥/渡邊水巴

かの鳥も水鳥にしてかなしかり/染谷卓

ここらより川の名変る浮寝鳥/中井啓子

こゝまでは河の銚子や浮寐鳥/久米正雄

流るるは浮寝鳥とも時間とも/黒川花鳩

さゞ波のいたづらめきぬ浮寝鳥/森田峠

浮寝鳥いま目覚めゐる一羽あり/西山誠

みな風に向きて静かや浮寝鳥/高橋卯木

一日の終はり水鳥はなやかに/浦川聡子

不忍の水鳥を見る礼者かな/岡本癖三酔

浮寝鳥はりまの國の端にをり/田中裕明

浮寝鳥また波が来て夜となる/寺山修司

俳句例:241句目~

体操時間皆駆けて水鳥の晝/容内田易川

浮寝鳥世の一隅の斯く寂か/深川正一郎

浮寝鳥別別になるうねりかな/瀧井孝作

初老とは四十のをんな浮寝鳥/黒田杏子

喪ごもりの目に水鳥の白が過ぐ/岸田稚

園閉ざし水鳥空に浮かべたり/宮津昭彦

浮寝鳥晝は水かげろふと住む/松村蒼石

太陽や水鳥のため我のため/高田風人子

浮寝鳥月の出を待つ沼あかり/田淵定人

岩あればしたがひ巡り浮寝鳥/原コウ子

川中へ吹き寄せられて浮寝鳥/中尾吸江

川涸れて水鳥さむきあしたかな/大江丸

浮寝鳥流されさうで流されず/中嶋秀子

浮寝鳥浪にゆられて向き~に/鈴木花蓑

御幸拝む人散りつくし浮寝鳥/岡本松浜

心寒う来て水鳥に啼かれけり/内藤吐天

浮寝鳥芦火明りにながれけり/石原舟月

浮寝鳥覚めて失ふ白ならむ/後藤比奈夫

推敲すいくども浮寝鳥の句を/田中裕明

港とは名のみの入江浮寝鳥/大瀬雁来紅

俳句例:261句目~

昔々ではじまる川の浮寝鳥/櫛原希伊子

灯ともして戻る御堂や浮寝鳥/松藤夏山

松の雪落ちて水鳥揺れかはし/野村泊月

林間の瀬に吹きよりて浮寝鳥/飯田蛇笏

橋に立つ人に水鳥来りけり/高橋淡路女

水は息つめて水鳥をねむらする/瀧春一

留守なればその足で浮寝鳥を見に/間石

水尾ひいて離るゝ一つ浮寝鳥/高野素十

白鳥も餌付く水鳥逆さ立ち/百合山羽公

水舐めて届く夕日に浮寝鳥/深見けん二

纜に水鳥並び堰かれけり/長谷川零餘子

翔たざれば翳の重しよ浮寝鳥/角川照子

水鳥となるまで猫の一本道/鳥居美智子

水鳥と今日の淡さや障子越し/中島月笠

水鳥と柱にもたれゐる人と/島田刀根夫

水鳥に土堤は電車の行き返り/島田青峰

舳かけてくさ~干しぬ浮寝鳥/清原枴童

水鳥に瞑る昼のありにけり/宇多喜代子

水鳥に船にぎはへる港かな/高橋淡路女

菜を洗ふ水輪のとゞく浮寝鳥/手島靖一

俳句例:281句目~

水鳥に落日のあり巣にもどる/伊東伸堂

裏那智は鉱区の灯のみ浮寝鳥/宮武寒々

貯木場の一画占めて浮寝鳥/小松世史子

逢ひたしと思ふ心に浮寝鳥/宮尾/寿子

水鳥に葦の葉舟も見えぬかな/野村喜舟

鎮らぬ水鳥破戒図となれり/河野多希女

水鳥のおもたく見えて浮きにけり/鬼貫

陵守の眼にいつもある浮寝鳥/野村泊月

陽の裏の光いづこへ浮寝鳥/高山れおな

陽を溜めて水鳥水に固定せり/椎橋清翠

水鳥のこゑ空にあり貝割菜/毛呂刀太郎

水鳥のすべて入日に真向へり/塚原麦生

水鳥のとほくそこだけ日向かな/西山誠

たましひも洗ひ立てなり水鳥は/宮坂静生

髪刈つて来し水鳥のかがやきに/斉藤夏風

しんかんと山に径ある浮寝鳥/神尾久美子

さめてまた一と聲浮寝鳥のこゑ/田中裕明

水鳥や墓所の火遠く江にうつる/高井几董

浮寝鳥見えたる国はわたしかな/攝津幸彦

水鳥や夕日きえゆく風の中/久保田万太郎