俳句例:101句目～
正月の背皮見せをる帳簿かな/久米正雄
正月の茶筅青けれ花過ぎし/大谷碧雲居
正月は空白藪のみ騒ぎつづく/香西照雄
正月は黄泉にてと又一人逝く/高澤良一
正月もすこし古びし六日かな/三輪一壷
正月も廿日に成りて雑煮かな/服部嵐雪
正月や一歯欠けたる妻の顔/佐野青陽人
正月や杣の遊びのふところ手/前田普羅
正月や若狭の日和すぐ崩れ/遠藤若狭男
正月を休む医師となりにけり/水原春郎
漆黒の髪の子に来しお正月/水野一風子
煮て焼いて正月料理おお忙し/高澤良一
あかつきの水仙の香の喪正月/野沢節子
ぬかづいて曰く正月二日なり/夏目漱石
正月や過ぐれば只の日数のみ/石塚友二
ふるさとや正月を啼く川原鶸/木下夕爾
蔭正月丹波の豆をうす味に/青木まさ子
シベリアも正月ならむ父恋し/寺山修司
行きずりに犬撫で旅のお正月/福田蓼汀
口開けて正月休みの登り窯/竹中碧水史
俳句例:121句目～
和服着て正月の畦やはらかし/池田秀水
大雪となりて今日よりお正月/前田普羅
座敷まで正月の陽差兵の写真/川崎展宏
庵とは正月の日のあるところ/斉藤夏風
松籟や正月つひに雨を見ず/佐野青陽人
正月のカイト荒川吹き曝し/松田ひろむ
正月の下駄の音する飛騨の峡/前田普羅
鮮やかな正月物に目を止めて/高澤良一
正月の人あつまりし落語かな/正岡子規
軒破れたる正月のざんざ降り/伊丹三樹彦
正月を月下美人のつめたき葉/秋元不死男
正月や日あたる道のさびしけれ/角川春樹
正月を馬鹿で暮して二月かな/鳴滝-秋風
洗ひあげて正月下駄の二足かな/皆川白陀
正月の花屑かかる籬かな/吉武月二郎句集
正月晴汽車が見たくて岡に登る/村越化石
青空のはりつめてゐるお正月/深見けん二
四五人を診て正月の和服醫師/下村ひろし
正月のもう散らかせる居間跨ぎ/高澤良一
正月の凧や子供の手より借り/百合山羽公
俳句例:141句目～
いつも一本柿の木をみて正月来/清水径子
正月駅伝一団抜け出て母校来る/奈良文夫
あたゝかき正月なれば麦踏まん/北里信子
賀状なき正月強き眸にて迎ふ/長谷川秋子
正月がすぎゆく固き炭を挽く/百合山羽公
正月の雲のももいろ瑠璃光寺/上野さち子
正月の雨夜の客につぐ火かな/長谷川春草
ぎこちない金と銀とのお正月/加藤ミチル
正月の足袋白うして母在はす/大谷碧雲居
正月のプランの中のラグビーに/稲畑汀子
正月やよき旅をして梅を見る/河東碧梧桐
正月の土を上げたる土竜かな/大峯あきら
樅の木をくぐる正月礼者かな/前田法比古
枯木に鴉が、お正月もすみました/山頭火
もてなしに正月舞ひの擦りささら/高澤良一
むささびと棲み正月の詩書くか/大峯あきら
げんげ田がすこし青みてお正月/廣江八重櫻
正月日和母にうぶ毛を剃られけり/太田鴻村
くらがりの峠とぶ風狂もいて正月/大西健司
おねしよしておのれ叱るやお正月/野村喜舟
俳句例:161句目～
正月のふしづけ澄みてゐたりけり/飯田蛇笏
正月のいたるところに世の出口/鈴木六林男
正月にちょろくさい事お言やるな/松瀬青々
納豆一本づつ売る正月の言葉のせ/萩原洋灯
読むことを専らとせり喪の正月/田川飛旅子
足くさるまで正月を医師読みたし/平畑静塔
島に住めば柑子沢山な正月日和/河東碧梧桐
正座して師は無けれどもお正月/佐々木六戈
子ら帰り正月すんでしまひたる/石井とし夫
正月や木曾には木曾の手まり唄/仁村美津夫
嫁ぎのこる正月街中の旗はためく/寺田京子
やっかいな正月の富士詠み初めに/高澤良一
正月の渡船場寒う渡りけり/柿腸/近藤浩一路
大根のしづかさ正月のコックたち/北原志満子
正月ももう七種のなぎさの貝がら/荻原井泉水
まんざいや正月にならばぼつぼつと/佐藤春夫
正月の日まちとふれて来しばかり/長谷川素逝
おらんだ正月珍だの酒はあまかつし/角川源義
としより昔の歌をうたひ正月を酔ひ/七戸黙徒
正月からとんだ目に遭ふぎっくり腰/高澤良一
俳句例:181句目～
待ちかぬる子に「お正月」飛んで来よ/中村明子
母亡き正月土管があればそれを覗き/加倉井秋を
正月を惜しみてかすむ旅人かな/吉武月二郎句集
正月の子供等が黄色い芝踏みに来てゐる/大橋裸木
箸箱に箸ごせとかやお正月/『定本石橋秀野句文集』
貧乏正月でもいつも神代藤平が来て元日なり/橋本夢道
七文半の吾子の白い足袋にあした正月がくる/橋本夢道
ちんぽ皆ぶらさげ正月の朝湯も去年の顔触れ/橋本夢道
裏白の葉が乾反りつつくもりのまま正月二日寒く暮れにき/松村英一
正月のさてもなんきんたますだれ拡ぐるかなた昭和のけぶる/土井紀枝
