季語/猪(いのしし/しし)を使った俳句

俳句例:101句目~

猪喰ひに校長山へ戻りけり/勝井良雄

猪垣にぬけ道のあり犬通る/飯島正人

猪垣に三輪山の猪封じたり/右城暮石

山野跋渉せし猪肉の薔薇色/細見綾子

猪垣のとつぷり暮れし土瓶蒸/森澄雄

猪垣の日を返しゐる谷の底/茂里正治

猪垣の杭束ね置く村の口/島田刀根夫

戸籍曝涼肥君猪手は妻四人/野村慧二

猪垣の途切れてそこに登窯/山田弘子

猪垣の長篠道の田水かな/八木林之介

猪垣を組む老若の影重ね/渡邊千枝子

猪垣を結びしといふ山便り/松田義朗

猪威す夜番の順の早も来し/西山泊雲

猪担ぐ相棒が声洩したる/藤田あけ烏

猪撃ちし話誇張と思はれず/中山秋月

星仰ぐ皆猪食ひし息吐きて/茨木和生

猪撃の闘志の眼なりしかな/板場武郎

昨夜の猪峠に現れて二つ/森下草城子

猪曳きし跡雪中に刃のごとし/大串章

猪汚れ瓜ん坊汚れてはをらず/森田峠

俳句例:121句目~

猪糶らる泥の乾きし爪揃へ/小田三亥

猪罠にたたずみ山をうち仰ぎ/上村占

白露や世渡りの猪現わるる/永田耕衣

猪臥たる跡の露けき濃龍胆/久米正雄

猪舁いて雪の釣橋撓めゆく/植平桜史

猪裂かれ天にちらばる暁の雲/早崎明

あの山の向うの山の猪猟師/宇多喜代子

繕ひて猪垣の知恵生きてゐし/山田庄蜂

総毛立ち土間の猪凍ててあり/下村梅子

猪が来て空気を食べる春の峠/金子兜太

笠の雪いくびになりて惜しまるる/卯七

空壜に写らむ猪よ待てしばし/永田耕衣

ずしずしとずしりと猪の威銃/茂里正治

猪吊られ関節になほ温みあり/三好潤子

猪の牙みがかれてゆく大野分/萩原麦草

はつ露や猪の臥芝の起あがり/向井去来

ふる里の猪垣の辺で一と休み/細見綾子

ほととぎす猪牙の布団の朝じめり/抱一

猪の抜毛かたまり草いきれ/吉本伊智朗

猪垣の月光年を越えむとす/千代田葛彦

俳句例:141句目~

わたり猪の竹の子につく山家かな/浪化

猪威し祭の空を染めて燃ゆ/米沢吾亦紅

をとゝひの猪に未練の男かな/岩崎すゞ

一人は醜女興がりぬ蟇猪首/松根東洋城

一族の墓に猪垣して住めり/出羽智香子

七匹の犬猪山を見ず登りけり/萩原麦草

猪撃のうたげ弾帯つけしまま/手島靖一

猪垣に日のありながら鳥帰る/山尾玉藻

内臓ぬかれたる猪のなほ重し/津田清子

刃を入れて滴る血なし猪の肉/山口誓子

分校に猪の来し跡さだかなり/安藤照子

吊るされて地面に近き猪の鼻/森田智子

咲く花をくるひ残して離れ猪/浜田酒堂

夕薄暑江戸の資料に猪牙舟も/斉藤淑子

夜なべ村猪の寝息の間近かな/久保厚夫

猪垣の更に高きへ組まれあり/藺草慶子

猪撃ちの口鉄砲をつづけをり/高澤良一

茶が咲いて猪垣へゆく背負籠/綾部仁喜

猪垣へ消えゆく径や釣舟草/八木林之介

猪撃ちの第一発のこだませる/金井綺羅

俳句例:161句目~

玄関に蚊遣の猪の今日もあり/野村泊月

店頭や乾からびてある猪の鼻/相島虚吼

猪も抱れて萩のひと夜かな/遊女-高尾

手負猪萩に息つく野分かな/河東碧梧桐

猪の毛をふるひ出す落葉かな/水田正秀

猪をになひ行野やはなすゝき/加舎白雄

猪食つて山中忘る余寒かな/秋元不死男

猪食つて丹田ぬくき奥吉野/海老根筑川

猪の血にふくれたる藪蚊かな/会津八一

猪をそらせし弾の続けざま/鈴鹿野風呂

昨夕猪にやられしかごと畠主/西山泊雲

昼月やふぐりあらはに撃れ猪/吉野義子

猪荒れて畳のごとき稲田かな/岡田耿陽

猪撃ちに取り憑かれたる脂顔/高澤良一

栗むいて食べたる跡や猪の垣/細見綾子

梁に吊す鉤むきむきに猪を待つ/村田脩

猪垣のひとところ切れ人通す/岡田日郎

楢山を楢飛ぶ猪のうだきかな/幸田露伴

猪牙で来し客驚かす一葉かな/井上井月

猪撃の耳をすまして年とつて/黒田杏子

俳句例:181句目~

猪の背の擦場の土の匂ひたち/高木石子

深谿へ勢子追ひ詰めし手負猪/伊東白楊

猪焼いて旧正の島けぶらする/小熊一人

猪垣が見え四五戸見え奥近江/久米幸叢

狐罠はじきとばして猪逃ぐる/古川芋蔓

狩宿の猪さばき場といふ流れ/村上杏史

猟犬の屋号を背負ひ猪を逐ふ/北條/力

猟犬の猪を追ひつめたりし声/松尾緑富

猪が来て空気を食べる春の峠/金子兜太

猪の背骨と平行な棒は淋しい/四ッ谷龍

羅漢みな猪首に在し陽炎へる/尾関華陽

猪の床にも入るやきりぎりす/松尾芭蕉

猪も抱かれて萩のひと夜かな/高尾太夫

腕組みをして猪のこと話す/成瀬正とし

猪の山佛頭なども飛んで来る/伊藤白潮

草刈も伏猪も霧にかくれけり/前田普羅

葱坊主猪首鶴首ありにけり/向久保貞文

蚕笊もて猪垣結へり衣文村/松本たかし

猪吊れば夜風川風吹きさらし/石田波郷

過疎の里猪垣続く人家まで/国方佳根子